ビジネスの現場では、言葉にした意思表示と心の中での本当の意思が食い違う「心裡留保（しんりりゅうほ）」が問題になることがあります。普段から契約書に関わっている方にとっても、そうでない方にとっても、心裡留保が契約にどのように影響するのかは重要なポイントです。
今回は、心裡留保が契約にどう影響するのか、そしてそれに関連してどのような点に注意すべきかを解説します！
心裡留保とは？
心裡留保とは、ある人が外見上の意思表示とは異なる内心を持っている場合のことを指します。つまり、心の中では違うことを考えているのに、あえて別の行動や言動を取るという状況です。
たとえば、以下のようなケースが心裡留保に該当します。
- 例1: 予定があるのに、上司からの依頼を断れずに「大丈夫です」と答えてしまう。
- 例2: 商品に不満があるけれども、クレームを避けるため「問題ありません」と伝える。
このように、外見上の言葉や行動と心の中の意思が一致していない場合が「心裡留保」とされます。
心裡留保と契約の関係
契約においては、基本的に「意思表示」に基づいて合意が成立します。では、心裡留保のように、表向きの意思と内心が異なる場合、契約はどうなるのでしょうか？
1. 心裡留保が契約を無効にするケース
一般的に、相手方がその心裡留保を知っていた場合、または知ることができた場合、その契約は無効とされる可能性があります。たとえば、相手が明らかに心の中で違うことを考えているとわかっているのに、あえて契約を進めた場合です。
2. 契約が有効になるケース
一方で、相手がその心裡留保に気づかず、表面上の意思表示を信じた場合、その契約は有効となります。相手に迷惑や損害を与えない限り、外見上の意思表示に基づいた契約が成立します。
このように、心裡留保が契約の有効性にどのように影響するかは、ケースバイケースで異なります。したがって、契約に携わる方は、心裡留保のリスクを十分に理解し、適切に対応する必要があります。
最近よく見かける無料マンガの「契約結婚」「偽装結婚」については判例が見つけられず、契約が無効となるのか有効となるのかは当事者の置かれた状況によって結果が異なると思われる事例でした。
ちなみに佐藤さんが那楼院様の思惑（本当は期限付きの契約結婚ではなくちゃんと結婚したい）を分かっていて契約した場合、この契約自体が無効になります。
契約には当事者の嘘偽りのない意思表示が必要となります。
心裡留保のリスクを避けるために
契約書の作成や契約交渉の際に、心裡留保の問題を避けるためには以下のポイントに気をつけることが重要です。
- 意思表示の明確化 契約相手とのやり取りでは、曖昧な表現を避け、しっかりと意思を伝えることが重要です。「本当にこの内容で契約を進めてよいか」を何度か確認するなどのプロセスを入れることが有効です。
- 契約内容を文書に残す 契約は口頭ではなく、必ず書面で行うことが重要です。契約書の中で、各条項について当事者が十分理解した上で合意していることを確認できる条項を盛り込み、後々のトラブルを防ぎましょう。
- 専門家への相談 契約書に携わる中で、心裡留保やその他の法律問題が発生しそうな場合は、専門家への相談が有効です。特に重要な契約においては、リスクを最小限に抑えるため、第三者のチェックを受けることをお勧めします。
まとめ：契約書作成のプロに相談するメリット
心裡留保が関与する契約は、場合によっては無効になるリスクがあります。特に大事な契約ほど、内心と外見の意思が一致しているかを確認する必要があります。
普段、契約書の作成やチェックに携わっている方は、もし曖昧な意思表示や心裡留保の可能性がある場合、専門家に相談することでリスクを回避できます。
契約書の作成やレビュー、トラブル予防のためのアドバイスを行っております。何かご不明点やご相談がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
