飲食店の「安全」はどこから来る?食品衛生法と営業許可の重要性

許可

今回の漫画は「飲食店の予約キャンセルや契約」に関するお話ですが、解決方法は次回のお楽しみとなっています。
そのため、今回のクイズも契約についてではなく、飲食店にまつわる内容にしました。身近な飲食店を思い浮かべながら、楽しんで読んでいただければ幸いです。
それでは、クイズの回答に進んでみましょう!

飲食店を営業する許可について

飲食店の手洗い場は、保健所によって、調理用、食器用、手洗い用など用途を分けて設置することが求められています。
それではここで問題!飲食店や飲食を提供する店舗の店主たちが、店内の手洗い場について相談してきました。

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行政書士の鳳梨先生が「はい、大丈夫です!」と返事するのはどのお店でしょうか?

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クイズの回答と理由

ラーメン屋の店長
「客席を広く取りたいから、手洗い場をトイレの個室に併設したいです。トイレの外には設置しなくてもいいですか?」

答え:△
トイレを使用している間は手洗い場を他の人が使えない状態になることから、衛生面でNGとなる場合があります。ただし、保健所の判断やお店の広さによりますので、トイレの外に手洗い場を設置できない場合は早めに確認することをお勧めします。
手洗い場は従業員と客で併用しても問題ありませんが、この要件の本質はあくまで「食中毒などの健康被害を防ぐため」。調理や料理のサーブを行うスタッフも、お店に来た客も、手元を清潔に保つことができるように求められているのです。

コンビニの店長
「イートインスペースを新たに設置します。すでに店内に手洗い場があるので、新しい手洗い場を設置しなくてもいいですか?」

答え:〇
小規模なイートインスペースであれば、別の手洗い場が整備されていることで基準を満たします。この問題の場合は、すでに手洗い場が店内にあるため、イートイン専用の手洗い場を用意しなくても良い、と判断できます。
これは2021年6月に、主に提供する食品の調理が簡易(例えば既製品を温めるだけであったり、注ぐだけであったりするもの)である場合は販売場に手洗い場を設置する必要がないと施設基準の一部緩和がなされたためです。

カフェの店長
「おしゃれな内装に合わせて、幅20cmの小さい陶器ボウルを手洗い場として設置しました。これで営業許可を取れますよね?」

答え:×
実は手洗い場で良ければ何でも良いわけではなく、幅36センチメートル×奥行28センチメートル以上でなければいけません。通称「L5」と呼ばれるサイズです。
従業員の手洗い場を兼ねる場合は、さらに洗浄後の手指の再汚染が防止できる構造(ひねるタイプの蛇口ではなく、自動感知式やレバー式)も要件とされています。

皆さんが飲食店で外食やテイクアウトを利用するとき、手洗い場やトイレの位置、石けんや消毒液の設置状況、さらには惣菜やテイクアウト容器の仕様にあまり違いがないことにお気づきでしょうか?
これらはすべて、現代の食へのニーズや環境の変化に対応しながら、食品の安全性を守るために進化してきた食品衛生法に基づいた基準によって統一されているのです。
飲食店は、店舗をこの基準に従った施設や設備に合致する状態にしてから、営業許可を受け、さらにその状態を維持管理する必要があります。


飲食店の衛生管理はHACCPが基本

飲食店では、食品衛生法に基づき、HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理が義務付けられています。HACCPとは、Hazard(危害)Analysis(分析)Critical(重要)Control(管理・制御)Point(点)の頭文字を取った言葉で、食品の安全性を確保するための制度のこと。この仕組みにより、以下のような安全対策が実施されています。

  • 食中毒リスクの軽減
    衛生管理の徹底により、食品を介した病気や事故のリスクを抑えています。
  • リコール義務
    万が一、商品に不備が見つかった場合、店側は行政に報告し、迅速に商品を自主回収(リコール)する体制が整っています。
  • 店内外の清潔保持
    店内の衛生はもちろん、店外の清掃や管理についても法律で定められています(食品衛生法第50条の3)。

これにより、私たち消費者は「このお店の食品は安全だ」と信頼して利用することができます。


クイズで考える!「大丈夫じゃない」お店のリスク

今回のクイズでは、飲食店が法律を守らなかった場合のリスクについて考えていただきましたが、飲食物を口にするのは飲食店だけではないですよね。
たとえばフリマアプリで、例えば何かのイベントで。許可を持っていない人から個人へ飲食物が受け渡されることもあります。
衛生管理が不十分な環境で作られた料理や、誰が作ったか分からない食品、一度個人の手に渡った食品には、食中毒やその他の健康被害の危険性が潜んでいます。
便利に食文化を楽しむ一方で、こうした危険性を考えることはとても大切だということを、今一度頭の片隅に留めておいてもらえたらと思います。


食品衛生法改正1:従来との管理体制の違いと影響

食品衛生法は、現代の課題に対応するために改正が進んでいます。
たとえば一時期メディアで取り上げられていた「手作りのお漬物がなくなる!?」という騒ぎを覚えていますか?

実はお漬物は、数年前までは許可が無くても販売することが出来ました。
「漬物」と聞くと塩辛くて長持ちしそうな気がしますが、塩分濃度が低いものや水分の多い浅漬けなどは傷みやすいもので、実は2012年に腸管出血性大腸菌O-157による集団中毒も発生しています。

もちろん、事故を起こしていない販売店もたくさんありました。特に漬物製造業、水産製品製造業で、今まで事故が起こっていなかった事業者にあっては、必要性が理解できないとの強い思いがあり、説明会を求める意見も多く寄せられたようです。
令和5年度 食品衛生法改正事項実態把握等事業 報告書(厚生労働省)

HACCPを用いた改正食品衛生法が施行されたのは2021年、その後3年間の経過措置があり、今年の6月で完全適用が開始されました。それ以降お漬物を販売する場合には営業許可が必要になったのです。経過措置は、営業許可を取ってつづけるか、販売をやめるかを検討するための時間だったといえます。
結果として、特にお漬物などの食品では、衛生管理を徹底した事業者が販売するのが一般的になりました。ちなみに「今後は包装された漬物が売られるようになる」という見出しの記事も見受けられましたが、事業者は基本的に包装して出荷する…という意味で、包装することが改正によって義務付けられたという訳ではありません。

以前のように手作りの品を直接箱の上に置いて販売するスタイルはほとんど見られなくなり、伝統的な販売風景が減少したことに一抹の寂しさを感じる方もいるかもしれませんが、食品衛生の観点からは大きな前進でした。従来の管理体制とどのような違いがあるのか、図で確認してみましょう。

従来の管理にくらべ、HACCPを用いた手法では製造工程を細分化し、工程ごとのリスク管理を行います。入荷から出荷に至るまで、危険要因(HA/有害物質や異物)を分析し、重要管理点(CCP/図では加熱・冷却・包装の工程)ではより厳格にリスク管理を行うことで、問題のある製品の出荷を防ぐ仕組みになっています。

導入の効果として、製品の品質向上や食品ロスの削減が見られますが、同時にHACCP の運用に係るモニタリングや記録の手間(金銭以外の問題)がかかるという事業者側の声も上がっているようです。
具体的には「冷蔵庫の温度管理を毎日する」であったり、「粗熱を取る方法を急速冷凍に変える」であったりと難しくないことに見えますが、大量に食品を提供する事業者としては一つずつの工程で手間がかかることですよね。
こうしたひと手間を当たり前と思うか、ありがたいと思うかは、その人の受け止め方だけではなく、こうした法律の改正の影響を知っているか否かも影響するのではないかと私は考えます。

食品衛生法改正2:事業譲渡による営業許可の承継

ちなみにこの改正では、すでに飲食業を営んでいた人にとっても大きな改正がありました。注目すべきは、「事業譲渡による営業許可・届出の地位の承継」かと思います。
この改正により、後継不足に悩む老舗が事業を譲渡しやすくなり、M&A市場でも注目されています。ここでは飲食業のM&Aにおけるメリット、デメリットをそれぞれ確認していきます。

事業を売却する側のメリット

  • 店舗ブランドや顧客基盤を活用できる。
  • 売却資金を引退生活や他の事業に充てられる。

事業を売却する側のデメリット

  • 交渉で不利な条件を受けるリスクがある。

事業を買収する側のメリット

  • 新規開業より低リスクで既存店舗を活用可能。

事業を買収する側のデメリット

  • ブランド維持や改革が困難な場合がある。

消費者のデメリット

  • サービス品質や味が変わるリスクがある。

昨今では黒字廃業といった単語も良く聞かれるようになり、後継不足になる前に、また赤字経営に至る前に事業を譲渡しようという経営者の方のお話を伺うことも多々あります。飲食店の事業譲渡については現時点で大きな問題は確認されていませんが、一番海外から進出してきやすく、かつ消費者への影響が大きい業界と思いますので、今後も注意深く見守りたいところです。


行政書士ができること

飲食店の開業や営業許可の申請、また事業譲渡に関する相談は、行政書士が承ることができます。
食品衛生法や関連法規を踏まえたアドバイスを通じて、事業者が安心して営業を続けられるようサポートいたします。

「飲食店を始めたい」「事業譲渡を検討している」という方は、行政書士事務所ユアウィルへお気軽にご相談ください!

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